矛盾恋愛
◇◇◇
ふと眼が覚めると,そこは教室だった…。
「…?」
「おぅ。おはよ」
「…はぁ?」
「天音さぁ,寝てたんだよ? 今まで」
「えっ!!? なんで起こさなかった!?」
「やあ〜。寝顔が可愛くって」
「………」
「あはは〜そんなに睨むな。怖い。ほんと言うと起こしたけどおきなかった。って感じ」
「そっかぁ…。」
私は少し安心した。
時計を見ると五時をまわっていた。
ひょっとして本名は,私がおきるまでずっと待っていたのだろうか。
「ねえ本名,もしかしてずっと私のこと待ってたの?」
「うん? そうだけど? 天音みたいな可愛い子をこんなところにいつまでも置いてとけねえよ。」
そういって本名はにっこりと微笑んだ。
「…天音言うなっ。」
ああ。有難うって言うタイミング逃したじゃんか。
「…九ったらよ。可愛くねえの」
可愛くなくて結構。その台詞を言う前に本名が
「でも,そこが好きだよ」
なんて事を言う。軽い。いつもみたいに特売のこんにゃくなんかよりも
ずっと安い「好き」という言葉。
ねえ,本名は本気なの? いつもそんな綺麗な笑顔で言うから,言い返す言葉はいつも不器用なことばかり。
素直に聞けば,なんとなくもやもやして,いらいらするこの気持ちも,少しは晴れそうなのに。
本名なんか,嫌いなのに。容赦なく叩き落とせばいいのに。
「…帰る。」
いらいらした私は,そういって一人で教室を出た。
すると,本名も着いてきて,
「送ってくよ。いまの世の中物騒だからな」
といった。
「お前が一番物騒だっ!」
そういったけれど,もう冬になった外は暗かった。
花の女子高生としては,暗い夜道はすこし怖い。
そんな私の気持ちを察したのか,
「素直になれよ。」
そう笑って私の手を引いて学校を出た。
その間,私はずっと黙っていた。
『すなおになれよ。』その言葉がずっと響いていた。
本名の手は,暖かかった。
私は,その手をずっと見つめていた。
「ん? どうした,顔赤いぞ?」
「赤くない」
「赤い」
「赤くない」
「赤い」
「赤くない」
「俺のテストは?」
「赤点」
「お前の顔は?」
「赤くない!」
…だんだんいらいらしてきた。もうその手には引っかからないって
分からないのだろうか。
「…て…なせ…。」
「え? 何? 聞こえない」
「手ぇ放せっ!!」
私は本名の手をばし。と振りほどいた。
「…天,音?」
「…知ってる? 私は本名みたいな軽い男,嫌いなの。」
「…………。」
本名は黙ったままだった。
「じゃあさ,何で,一番に手を払わなかったの?」
それは…。すぐに答えられなかった。
なんか,変だ。嫌いなのに。すごく,いらいらする。
「知らないよ。寝ぼけてた,だけ…。」
やだよ。
わかんないよ…。
本名の,バカ。
「あ…っおい! 待てよ!!」
あたしは下を向いて走った。
ただ,ひたすらに,何かから逃げるように走った。
気づいたときは,家の前に一人で立っていた。
無事に帰ってきたのに,
なんだか泣きたいような気分だった。