消しゴムのおまじない

  辻村音々〈つじむらねおん〉……あたし。星城学園中等部一年。主人公。♀。


朝起きて、着替えて、顔洗って、寝癖直して、食堂行って、学食食べて、

 会ったトモダチに

 「おはようっ」

 教室行って、貴方に会って、赤くなって

 「…おはよ。」

 そして、いつものように、

 貴方のトナリの席に座る。

 そして、気付く

 「…あ、消しゴム忘れた…」

 

 授業開始5分前。

 今から、あたしの部屋に行って…は無理。

 今から、買いに行く…も無理。

 あとで、トナリの男の子に貸して…なんて言えない。100%無理。

 なーんて考えてたら、授業開始。

 まちがえないよーにしなきゃ

 そして、また気付く

 トナリの男の子がいないっ!

 なんで?どーして?保健室?だいじょーぶかなぁ…?

 

 ガララララ。

 ドアが開く。  

「オイ、遅刻だぞ。どうした?」

先生の声にこたえるのは…

「スイマセーン。消しゴム忘れちゃって〜。」

 トナリの男の子。あら奇遇…

 「そういう時は、トナリのやつに貸してもらえ。」

 と、先生が出席簿で男の子を殴る。

 「い゛た゛っ」

 クラスに広がる笑い声。

 頭をさすりながら、あたしのトナリに座る男の子。

 皆が静かになって、授業に集中し始めたころ。

 くしゃくしゃのノートの切れ端をあたしに渡す男の子。

 開いてみると、さっき買ったって言ってた消しゴム。紙には『あげる』  ………。

 くしゃくしゃのノートの切れ端を男の子に渡すあたし。

 紙には、『どうして?』

 『わすれたんだろ?』

 『なんで?あんたも忘れたんじゃないの?』

 トナリの男の子は にっ と笑って自分の消しゴムをあたしに見せる。

 え…?それってもしかして…?

 

   あたしのため?

 

 真っ赤になるあたし。

 そして、ノートの切れ端に『ありがとう』と書いて

 トナリに渡す。

 



 そして、本当に気付く

 っていうか、気付いちゃった。

 

 



 あたし、恋してるんだ。トナリの男の子に…。

 





 どっかで聞いた、恋のおまじない。

 消しゴムに、緑のペンで好きな人の名前を書いて

 誰にも見られずにその消しゴムを使い切ると、恋が実る…

 消しゴムをスリーブからだして…、

 





 はじめてきづく。  



 まっしろなはずのけしごむに、みどりのもじで  





     



     [ 辻村音々 ]          



     …ねぇ、信じていいの?

   おまじない、嘘だよね。

   あたしがみても、トナリの男の子の恋、実ったよ?